Remind / Mori’s grave
森正洋さんのお墓参りに行きました。
森さんには子供がいなかったこともあり、
本家のお墓に奥様、ご先祖と共に眠っているそうです。
森さんからは多くを学びました。(簡単には説明できませんが)
当時書いた文章(良品計画在職時に、森さんを偲ぶ展覧会を開催した際に寄せたもの)
が見つかりました。(少し学んだことをお伝えできるかも知れません)
以下展覧会紹介文です。
2004年の春から無印良品の器は一人のデザイナーとのコラボレーションにより開発されてきました。
「器はまあまあだね。マグカップはふつうだけどね。」
40年以上も陶磁器を手がけてきたプロダクトデザイナー森正洋さんからの無印良品に対する最初のコメントでした。
一緒に仕事をする中で、この言葉に込められた重要なメッセージを理解しました。
それは、「まあまあ」と「ふつう」の間にある差です。
「まあまあなもの」とは、消極的な、あるいは”及第点の”といった意味合いを含みます。
一方「ふつうのもの」とは、広く一般に通じているものを指します。
無印良品は”ふつうのものをちゃんと”つくるべきだということを再認識させてくれた一言だったのです。
佐賀にある森さんのアトリエに何度も出向き、食器にまつわるいろいろな話をしました。
その中から『毎日使う』という無印良品の器のテーマが決まりました。
毎日使うものだから、使ってみないとわからない。
森さんは必ずご自身で試作し、実際に食事しながらサイズや重量などの検証を行われます。
「カレーを食べると少し浅かった」
「最近の若者はパスタを何グラムくらい食べるのか」
「シリアルに牛乳をどのくらい注ぐか」
など、何度もやりとりをし、点検、修正を繰り返しつくっていったのです。
時には試作だけで商品化に至らないこともありました。
無印良品は、この一連の作業から、つくり手が自信を持って
お客様にお薦めするためにしなければならない当たり前のことを森正洋さんから学びました。
器のみならず、ものづくりとは人が使うものをつくることであり、
その際につくり手が持つべき自覚とともに重い責任があることを私達に伝えてくれたのです。
今回ご紹介するボーンチャイナの洋食器シリーズの試作がようやく完成した昨年11月12日、
森正洋さんは永眠されました。
森さんと無印良品の最後のコラボレーションとなった洋食器シリーズは、飾る器ではありません。
しかし、使い勝手を追求した器はこの上なく美しいものに感じられます。
皆様にも是非お使い頂き、細かいディテールを手で、指で、唇で感じて頂きたいと思っています。
そして、いつでも追加や補充ができるように、私たちは長く大事に作り続けていきます。